デンハーグのStatenkwartierってどんな街?|商店街「De Fred」とフランスパン屋Philippe Galerneを歩く
公開: 2026-08-23
デンハーグの気になる街を実際に歩いて「住むならどうか」を考える、ハーグのエリア巡りシリーズ。第1弾のビンクホルストに続いて、今回は Statenkwartier(スターテンクワルティア) です。
再開発中で「まだ育ち中」だったビンクホルストとは正反対の、100年以上かけて完成された街。歩き終わったときの感想は、これでした。
「ここで完結できちゃうね」
実はこの感想には裏付けがあります。私たちはこの街の端っこに、1年半住んでいました。エリア巡りシリーズで唯一の、「見に行った街」ではなく「住んでいた街」です。※エリア巡りをシリーズ化しようと考えています
Statenkwartier ってどんな街?
Statenkwartier は、デンハーグの中心部とスケフェニンゲンの海のあいだにあるエリア。1890年〜1915年ごろに建てられた重厚な邸宅が並ぶ、歴史ある高級住宅街です(De Fred公式サイト)。
中心部とスケフェニンゲンの海のちょうどあいだ。商店街 De Fred(Frederik Hendriklaan)がエリアを貫いています
地区名は「Staten(国家)+ kwartier(地区)」。名前のとおり周辺には国際機関や公的な建物が集まっていて、住宅街の空気のなかを歩いていると急に大きな施設が現れる、独特の雰囲気があります(この「もう一つの顔」は、記事の後半でくわしく)。
そしてこの地区の背骨になっているのが、商店街 Frederik Hendriklaan(フレデリック・ヘンドリックラーン)、通称 「De Fred(デ・フレッド)」 です。
1kmの商店街「De Fred」
De Fred は1909年から続く、約1kmの商店街(DenHaag.com)。食料品、家具、洋服、靴と専門店が並びます。
地元での呼ばれ方が面白くて、生鮮のお店──八百屋・肉屋・パン屋──のレベルが高いことから、お店の人たちは誇りを込めて 「デンハーグの PC-vers-straat」 と呼んでいるそうです。PCホーフト通り(アムステルダムの高級ブランド街)の「生鮮版」という自負。全国レベルの賞をとった店がこれだけ集まる商店街は他にない、と(LEVEN! Magazine)。
実際に歩いてみると、たしかに揃っています。
- スーパーは Jumbo も Albert Heijn もある。ドラッグストアは Kruidvat に Etos、生活雑貨の Blokker まで。本当に何でも完結できます
- レストランひととおり
- Holland & Barrett(自然食品・サプリ)
- Rituals(コスメ・バス用品)
- イタリアン(前に入ったことがあります)
- 自転車屋さん
- 1979年創業のデリカテッセン Simon de Vogel(Frederik Hendriklaan 70。手作りのお惣菜・肉加工品・ワインの店。公式サイト)
- そして、小さくて良さそうな個人商店がとにかく多い

1979年創業のデリカテッセン Simon de Vogel。手作りのお惣菜・肉加工品・ワインが並びます
チェーンと個人店のバランスがちょうどよくて、「今日はここで全部済ませちゃおう」ができてしまう通りです。
ここは住んでいた実感として言えるのですが、「高級住宅街」と聞いて身構えるほど、日々の生活費は高くなりません。普段の買い物は Jumbo や Albert Heijn で済むので、食費・日用品は市内の他のエリアと変わらない。受賞歴のある専門店は「ハレの日」に使う感じです。
おもちゃ屋「De Kikkerkoning」
たまに覗きに行っていたのが、子ども用のおもちゃと雑貨のお店 De Kikkerkoning(カエルの王さま)。Aert van der Goesstraat にあります。
チェーン店に並んでいるようなものではなく、温かみのあるおもちゃや雑貨が充実しているのが良いところ。1990年代から木のおもちゃを売ってきたお店で、子ども服や食器、ちょっとした贈り物まで揃います。買う予定がなくても、つい覗いてしまう類のお店です。ここには、シルバニアファミリーやモンチッチなんかもありました。

オレンジのストライプとカエルの王冠マークが目印
いつも大行列のジェラート屋「Luciano」
商店街のジェラート屋 Luciano(メースタライク・アイス) は、いつ通っても大行列。天気のいい日の行列は、もはや De Fred の風物詩です。並んでいる時間も、街を眺めていればそれほど苦になりません。

黒い外観に赤いロゴ。この落ち着いた見た目から、あの行列が生まれます
閉店間際の花束
この通りには、個人的に忘れられない思い出があります。
このエリアに引っ越してきたのは、私がオランダに来て半年くらいの頃でした。言葉も生活も、まだまだ慣れない日々。
そんなある日の夕方、De Fred で買い物をしていたら、閉店間際の花屋さんの路面店の人に声をかけられました。そして、とても大きな花束をもらったんです。
ちょうど母の日。私は妊娠6ヶ月目で、つわり明けでも体調が安定しない日が続いていました。ほとんど家に篭りっきりだったため人との接触もなくメンタル的にも弱り、どんどん心が荒んだ状態に…。
このままではいけない!まずは外へいかねば。と外へ出たものの、戦闘モードの私はJumboに向かってただひたすら前を見て歩きていました。
そんな状態の中、「ヘイ!これあなたにプレゼントよ(ウィンク)」と花屋さんのスタッフから花束をババっと渡されました。
呆気に取られていると「これフリーだから、もってかえって❤️」 超綺麗な花束に弾けるキラキラ笑顔。私の眉間の緊張が一気に溶けていくのを感じました。
その後の私の気持ちはとっても晴れやか。Happyだーと思えることが増えて、同じ日常もまるで違った景色に見えて来ました。
慣れない国で、知らない街の花屋さんから思いがけず花束を渡されたとき、私は初めて「オランダ生活も悪くないかな」と思えたのです。
やはり、人とのつながり、地元とのつながりが自分にとってとても大きいものなのだと気づいた瞬間でした。
どうやらこの通りが好きなのは、パンや本のせいだけではないようです。
街の居間、本屋さん「Paagman」
De Fred でいちばんおすすめのお店を聞かれたら、私は本屋の Paagman(パーフマン) を挙げます。Frederik Hendriklaan 217(公式サイト)。
ただの本屋ではありません。1951年にまさにこの Frederik Hendriklaan で創業した、三代続く家族経営の老舗です(Wikipedia)。1960年代から作家のトークイベントを開いてきた、街の文化拠点でもあります。

メインの入り口。鉄細工の飾りが老舗の風格です
そして何より、ここは地域の憩いの場になっています。
- 店内にはカフェがあります(150席の Kicking Horse Café。カナダのロッキー山脈で焙煎される Kicking Horse Coffee が名前の由来だそう)。本を眺めながらゆっくりできる
- お店の外にはベンチ。買った本をその場で開く人、ただ座って通りを眺める人
- つながっている別店舗には子どもの本のコーナー。うちはここで娘にナインチェ(ミッフィー)などの絵本を買いました。

こちらが子どもの本の店舗。「van Paagman」の白いファサードが目印です
一度、夫婦で娘をベビーカーに乗せてカフェに行ったら、隣に住んでいたおばあちゃんにばったり会ったことがあります。「あら〜」と手を振ってくれて、しばしおしゃべり。ああ、ここは本屋というより街の居間なんだな、と思った瞬間でした。とてもアットホームなお店です。
また連なったお隣には、文具屋さん。子供のFancyなものから実用的なものまで一通り揃います。また地下にはお土産の箱やラッピングなんかも置いてあり、ここも含めて見応え抜群のPaagmanです。
「ハーグで一番美味しい」——パン屋 Philippe Galerne
この街で、我が家にとって特別なお店をひとつ挙げるなら、フランスパン屋の Philippe Galerne(フィリップ・ガレルヌ) です。場所は Aert van der Goesstraat 24。De Fred の先に続く通りで、Frederik Hendriklaan の延長にあたります(DenHaag.com)。2006年からこの通りで店を開いています(公式サイト)。

ベージュのオーニングが目印。De Fred の延長、Aert van der Goesstraat 沿いにあります(画像:Google ストリートビュー)
きっかけは、私の語学の先生でした。ある日、「ハーグで一番美味しいものがあるから」と、ここのクロワッサンをわざわざ買ってきてくれたんです。オランダで一番、とまで言っていました。
そして後日、夫のフランス人の同僚も「ハーグで一番美味しいパン屋」としてこの店を紹介していたと知りました。本場フランスの人のお墨付きです。
食べてみて、納得。以来、我が家の定番になっています。

オープンキッチンで作られる、外はパリッと中はしっとりのブール(写真:Philippe Galerne 公式サイト)
パンが、ぜんぶ美味しい
店主はパリとヴェルサイユの有名パティシエのもとで修行した職人さん。オーガニックの素材を多く使い、人工添加物を使わない方針で、オープンキッチンなので作っているところが見えます。
実際に食べてきたなかでは──
- クロワッサン(先生いち推しの、例のやつ)
- パン・オ・ショコラ
- バゲット
- ブール(丸い田舎パン)
どれも美味しい。「フランス系のパン屋」はデンハーグにいくつかありますが、基本のパンがここまで全部おいしい店はなかなかありません。
お土産にも強い
パンだけではなくて、エクレアやケーキ、マカロンも並んでいます。うちは人の家にお邪魔するときのお土産をここで買っていくことが多くて、外したことがありません。
キッシュもおすすめです。一人用の小さなサイズから、みんなでシェアできる大きなものまであります。
さつまいもの話
一度、店頭で菓子パンの中身が分からなくて、聞いてみたことがあります。
私「これ、中身はなんですか? ……さつまいも?」
お店の人「いいえ、違うけど……その発想はなかったわ、さつまいもも悪くないわね」
違ったんかい、と思いつつ、新作のヒントになったのかもしれません。いつかさつまいもパンが並んでいたら、それはたぶん、うちのせいです。
日本人の鍼灸院もあります
これは在蘭の方向けの情報を。Statenplein に YAMAZAKI鍼灸院(YAMAZAKI acupuncture clinic Japan) があります。美容クリニックなどが入る建物の一角で、日本の伝統的な鍼灸を掲げるお店。鍼灸・お灸・指圧マッサージから、子ども向けの小児鍼まで対応しています(公式サイト)。

鍼灸院が入るのは、こうした歴史ある建物。美容・歯科クリニックなども同居しています
じつは私自身は、住んでいた当初はここに気づいていませんでした。あとで鍼灸やマッサージを探していて「え、あの近くにあったの!」と知った口です。デンハーグで日本式の鍼灸にかかれる場所は貴重なので、体の不調で困っている方には心強い選択肢だと思います。行ってみたかった…!
美術館も国際機関も、歩いて行けるご近所
この街のもう一つの顔が、文化施設と国際機関の多さです。すぐ近く(一部は隣接の Zorgvliet エリア)に、これだけ揃っています。
- モンドリアンのコレクションで有名な Kunstmuseum Den Haag(デンハーグ美術館)
- 科学館と大型ドームシアターの Museon-Omniversum(子ども連れにうれしい)
- 国際会議やイベントの World Forum
- 化学兵器禁止機関 OPCW(2013年のノーベル平和賞を受賞)
- EUの警察機関 Europol
- かつて 旧ユーゴスラビア国際戦犯法廷(ICTY) が置かれた建物(現在も国際的な司法機関が使用)
「平和と司法の街」ハーグらしい顔ぶれです。住宅街を歩いていると、急にこうした大きな施設が現れる。美術館も国際機関も徒歩圏、というのはこの街ならではです。

ガラス張りの World Forum。国際会議やイベントの舞台になります

Eisenhowerlaan の Europol(EUの警察機関)本部。金属ルーバーの外観が目印

ずらりと並ぶ国旗。かつて旧ユーゴスラビア国際戦犯法廷(ICTY)が入っていた建物です

科学館 Museon と大型ドームシアター Omniversum。子ども連れの週末にもぴったり
子どもたちが選んだ、人気の公園
住み心地に地味に効いてくるのが、公園の充実です。この街の広場には人気の遊び場があって、「どの公園がいちばん好き?」という子どもたちの投票の結果を受けて、見事1位になったこの公園は近年リニューアルされました。新しく整備されて、遊具も増えています。買い物のついでに立ち寄って子どもを遊ばせる、が徒歩圏でできるのは、子育て世帯にはかなり大きいです。

子どもたちの投票がきっかけで新しくなった遊び場。遊具も増えました
夜はちょっと表情が変わる
いいことばかり書きましたが、正直な話も。
昼間はゆったりした上品な商店街なのですが、夜は少し表情が変わります。若い子たちの集まる場所になっていて、昼間の落ち着いた雰囲気とはだいぶ違う。危ない目に遭ったという話ではないのですが、ヤンチャな子もいるので「昼と夜で別の顔がある通り」だとは思っておいたほうがよさそうです。それでも、ハーグの中で一番と言っていいほど治安はとても良いです。
夜遅くにのんびり散歩する通りというよりは、日中を楽しむ通りです。
で、住むのはアリ?——1年半住んだ結論
エリア巡りシリーズ恒例の検討を。今回は「見に行った感想」ではなく、実際に住んだ結論です。
私たちが借りていたのは、この街の端のマンション。家賃は1,500ユーロ台後半で、広さは100m²超でした。デンハーグの相場を知っている人なら「それはかなり良い」と思ってもらえるはず。実際かなり良くて、いつまでもいるつもりでした。
出ることになった理由は、街ではありません。マンション全体の所有者が変わり、有期契約が更新されない可能性が高くなったからです。この顛末は賃貸契約を打ち切られた話に詳しく書きました。
その上での検討です。
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生活の便利さは文句なし。De Fred だけで買い物が完結し、海(スケフェニンゲン)にも中心部にも出やすい。日々の物価もスーパーがあるので問題にならない
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学校が近く選択肢も幅広い。 オランダの現地校だけでなく、ヨーロピアンスクールやインターも通える範囲。世界各国からの駐在員が多く住むエリアならではのInternationalな環境です
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本当の問題は家賃と広さのバランスです。100年かけて完成された街なので新規供給はほぼなく、家賃水準は高い。しかも、ここのエリアは外観や窓に関するリノベーションの厳しい制限があります。広さを妥協すれば入れますが、うちが借りていたような「広くて(相対的に)安い物件」は、今の相場ではなかなか出てこない と思います
※この制限は、Statenkwartier が 1996年に国指定の保護都市景観(rijksbeschermd stadsgezicht)に指定されているためです。守られるのは主に通りに面した外観で、内装は比較的自由。ただし正面の窓枠(kozijn)を別の形・素材に替える、ファサードを別の色に塗り替える、といった外観の変更には許可(omgevingsvergunning)が必要で、街並みの美観基準(welstand)で審査されます。だから通りごと100年前の姿が保たれているわけですが、住む側からするとリフォームの自由度は低め、ということでもあります。
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ビンクホルストが「将来に賭ける街」だとすると、こちらは「完成品を探し当てる街」。良い物件に出会えるかは、正直、運とタイミングです
住んでいた側からの結論は、「出会えたら迷わず住んでいい街。ただし出会えるかは別問題」。私たちも、契約打ち切りの件がなければ今も住んでいたと思います。
まとめ
- Statenkwartier はデンハーグの海側にある、100年ものの高級住宅街。国際機関も集まるエリア
- 商店街 De Fred は1909年から続く約1kmの通りで、生鮮のレベルの高さで有名。JumboもAHもKruidvatもあり、ここだけで生活が完結する。日々の物価は心配無用
- 老舗本屋 Paagman はカフェとベンチのある「街の居間」。子どもの絵本コーナーもあって、家族の憩いの場
- フランスパン屋 Philippe Galerne は語学の先生と夫のフランス人の同僚がそろって「ハーグで一番」と太鼓判を押した店。クロワッサンもバゲットも、お土産のケーキ・マカロンも間違いない
- 美術館(Kunstmuseum)や国際機関(OPCW・Europolなど)も徒歩圏。子どもの投票で選ばれてリニューアルした人気の公園もあり、日本式の鍼灸院(YAMAZAKI)まである
- 1年半住んだ結論:「出会えたら迷わず住んでいい街」。ネックは家賃と広さのバランスで、広くて手頃な物件は今の相場では貴重
ハーグのエリア巡り、他の街はこちら。
家探しの実体験はFundaでの家探し実践記と家を買う?借りる?にまとめています。
※お店の情報は2026年8月時点で公式サイトから確認したものです。営業時間や品揃えは変わることがあるので、お出かけ前にご確認ください。