デンハーグの再開発地区「ビンクホルスト」に行ってみた|1万2千戸の新しい街はまだ育ち中
公開: 2026-08-15
デンハーグで家探しをしていた頃、「次に来るエリアはどこだろう?」といろいろ調べる中で出会ったのが、**ビンクホルスト(Binckhorst)**という再開発地区でした。
中心部から歩けるほど近い旧工業地帯に、高級そうなタワーマンションがにょきにょき建ちはじめている。気になって実際に見に行った正直な感想と、あとから調べた計画の全体像をまとめます。デンハーグの「これからの街」を追いかける、街シリーズの第1弾です。
※計画・数字は2026年8月時点で公式サイト・地元報道から確認できた情報です。再開発計画は変わることがあるので、最新情報は必ず公式でご確認ください。
ビンクホルストってどこ?どんな場所?
ビンクホルストは、デンハーグ中心部の縁にある約130ヘクタールの旧工業地帯。運河沿いに内港を持ち、倉庫や自動車関連の工場がぎっしり詰まったエリアでした。デンハーグ・セントラル駅まで歩いて行ける距離感が最大の強みです。
セントラル駅とHollands Spoor駅のちょうど南東側。運河(Trekvliet)に沿った三角形のエリアです
市はここを「工業地帯から、住み・働き・訪れて心地よい緑豊かな街へ」変える計画を進めています(市の公式プロジェクトページ)。面白いのは、市自身が「もともとのラフで無骨な雰囲気を保ちたい」と明言していること。実際、醸造所のバー(Kompaan)や旧たばこ工場のレストラン(Loetje)、屋内スケートパークなど、工業地帯の建物を活かしたスポットがすでに点在しています(デンハーグ公式観光サイトの地区ガイド)。
実際に行ってみた正直な感想
期待して見に行ったのですが、第一印象は「思ったより、何もない」でした。
タワーマンションは確かに建っている。でもその足元は倉庫の面影が残ったままで、周りにお店も少なく、正直ちょっと寂しい。「マンションの完成予想図はすごく素敵なのに、街としてはまだ育ち中」という感覚です。

記事後半で価格に触れる分譲タワー「One MilkyWay」。上はもう完成しているのに、足元はまだ工事中──この“育ち中”感が現地のリアルでした(写真:Wikimedia Commons/CC0)
あとから調べて、この感覚には理由があったことがわかりました。地元報道によると、先に住み始めた住民からも「施設が揃わないまま住宅タワーが点在している」という声があり、市も方針を変えて「今後は街区単位で完成させる」方式に切り替えたそうです(Omroep Westの報道)。駐車場代が月277ユーロという住民の声も報道されていました(Den Haag Centraalの記事)。
チェックしていた物件のひとつ「Linck in de Binck」
私たちが家探しを始めた頃、このエリアで募集が出ていた物件のひとつが、Linck in de Binck(リンク・イン・デ・ビンク)という分譲でした。運河沿いのFokkerhavenに建つ、工業地帯らしい無骨さをあえて残したデザインの建物です。
- 全77戸。51m²のロフトから141m²のスカイハウス(2階建てのメゾネット)まで、ほぼ全戸が違う間取り(公式サイト)
- 建物の内外に3,600以上の植物を配した「自然共生型(natuurinclusief)」設計。中央には緑のアトリウム、1階には飲食店やワークスペースが入る計画
- 価格は約€372,500〜750,000、広さ64〜139m²で販売中でした(物件紹介ページ)
正直、間取りは私たちにはやや手狭で「ここが本命!」というわけではなかったのですが、デザインは魅力的で、抽選(loting)の募集が出るかどうかをチェックしていた候補の一つでした。こうして気になる物件を追いかけるうちに、ビンクホルストという街の将来性が気になっていったのが正直なところです。
計画はどのくらい大きいの?
調べてみると、規模は想像以上でした。
- 2018年に決まった現行計画(Omgevingsplan Binckhorst)では5,000戸の住宅枠。この枠はすでに到達済みで、完成した物件も続々
- 2026年6月、国・州・周辺3市などがさらに7,500〜8,000戸を追加する加速協定に署名(オランダ住宅省の発表)。合計12,000戸超の規模に
- 南ホラント州はCID(セントラル駅周辺の再開発区域)とビンクホルストを合わせて「オランダ最大の市街地内建設プロジェクト」と位置づけ(州の公式ページ)
- 時間軸は2040〜2050年。つまり30年がかりの超長期プロジェクトです(市の「Binckhorst 2050」ページ)
完成済みの例では、4本のタワーからなるBinck City Park(896戸)、社会賃貸100%のPegasus(300戸)など。建設中には木造ハイブリッドのBoogieWood(702戸)や高さ130mのThe Bloxもあり、「手頃な賃貸を多めに」という構成の物件が目立ちます。
家賃・価格はどのくらい?
公表されている実例を拾うと(いずれも公表時点の価格):
- 社会賃貸:月€430〜740(Pegasus・発表時)
- 自由セクター賃貸:月€970〜1,440・46〜90m²(Binck City Park TWEE)
- 分譲:€435,000〜(One MilkyWayの上層階・約75〜98m²)
「高級タワマンだらけ」の見た目に反して、社会賃貸・中間賃貸の比率が高い物件も多いのは意外な発見でした。
カギを握るのは新トラム線
追加の7,500〜8,000戸には、実は大きな条件が付いています。セントラル駅からビンクホルストを通ってフォールブルフ方面へ抜ける**新トラム線(Vlietlijn)**の整備です。総投資5億7,500万ユーロ(都市圏交通局MRDHの発表)。市の資料では「トラムなしに追加住宅は着工できない」とされ、開業は2030年代初め見込みと報じられています。
ほかにも、窒素規制で地域の建設許可が滞っていたり、送電網の容量不足(解消は2034〜36年見込みとの報道)があったり、騒音問題の訴訟で3年待ちになっている購入者がいたり。「工期は遅れがち」と言われるのには、それだけの事情が積み重なっているようです。
で、住むのはアリ?
あくまでうちの感想ですが──
- 小さい子連れの家族が今すぐ住むには早い。学校・公園・買い物などの生活インフラはこれから
- 一方、駅近の新築にこだわる人、長い目で街の成長を楽しめる人には面白い選択肢。完成予想図どおりに育てば、セントラル駅徒歩圏でこの規模の新しい街は他にありません
- 運河沿いのWaterfrontpark(岸から26mは公共の公園にするルール付き)など、計画の絵は本当に魅力的
うちは結局、今のライフステージには合わないと判断して別のエリアを選びました。でも「10年後のビンクホルスト」は正直かなり楽しみで、定点観測を続けたいと思っています。
まとめ
- ビンクホルストはセントラル駅徒歩圏の旧工業地帯を、30年がかりで12,000戸超の街に変える巨大プロジェクト
- 現地はまだ「育ち中」。生活インフラはこれからで、新トラム線が次のフェーズのカギ
- 家賃は社会賃貸から高級分譲まで幅広い。「高級タワマンの街」というだけではない
家探しの実体験はFundaでの家探し実践記と家を買う?借りる?にまとめています。渡蘭前の方はあわせてどうぞ。
※本記事は2026年8月時点の公開情報と個人の見学体験に基づきます。住宅の購入・賃貸の判断はご自身で最新情報をご確認ください。